2018-01-01から1年間の記事一覧

短歌つくった

色づきて成功したと思う絵の顧みられぬ冬の日の朝茜さす橋桁叩くスニーカー自殺しよっかな春も投げ捨て冬の風白くたなびく雪襖奥に陽光眠りいるかも枯れ木透く午後の光を通り過ぎティースプーンで春を溶いてる

絵に描いた女について

生まれて飛び出てキモ・オタクだったので、まだクソクソのクソガキだった頃から私は絵に描いた女のことを考えていた。 保育園の頃、眠れないお昼寝の時間に妄想していたのは美少女戦士セーラームーンのことだった。当時はアニメのセーラームーン本編は見たこ…

ホ のテーマ

十億年ぶりに休日の街へ出かけて本屋に行ったら、原民喜の新書が出ていたので買って読んだ。 私はこれまで原爆を描いた小説家・詩人としての原民喜しか知らなかったが、その新書を通じて原が終生抱えていた孤独や死への深い親しみの念や、死んだ妻への思慕を…

寿詩

特にめでたくもなく特段めでたくなくもない日曜午後3時に回転寿司に行く人類史上初めて月に降りる宇宙飛行士のステップでカウンターの端へ行くアナゴもしくはハンバーグは月面基地めいたプラスチックの天球をまとって 四十六億年前にも通った軌道に乗る月の…

小説貝田

『椰子は舞い降りた』 「ココナッツ神社って知ってる?」 徹夜明けの僕に、先輩はそう囁いた。 「は」 脳に充分酸素が回っていなかった僕は、返事とも吐息ともつかない声を出した。 それまで僕の隣を歩いていた先輩は歩調を急に早め、自転車を引く僕の前に立…

お一人様、空いてるカウンター席でお願いシャス!

黄色いキチガイ電車から下車すると、五十がらみのジジイとババアがホームのベンチで手を取り合いながら互いを見つめ合っているという『世界の果て』を目撃した。私はガン無視してホーム上のゴミ箱に向かった。 決して『世界の果て』を見た絶望からゴミ箱に身…

赤の記憶

私は赤が好きだった。 吊りスカートは絶対に赤が良かったし、防空頭巾も母に死ぬほど頼みこんで古着の赤い襦袢で作ってもらった。まだドロップスが手に入った頃には、二歳下の妹からドロップスの缶を奪い取り、赤いイチゴのドロップだけをほじくり出して全部…