寿詩


特にめでたくもなく特段めでたくなくもない日曜午後3時に回転寿司に行く
人類史上初めて月に降りる宇宙飛行士のステップでカウンターの端へ行く
アナゴもしくはハンバーグは月面基地めいたプラスチックの天球をまとって

四十六億年前にも通った軌道に乗る
月の砂漠に置き忘れたコカコーラの空き瓶みたいな背中の女が

10席向こうのカウンターでエンガワを一人食べてる

炙りトロサーモンは彗星となって五分ぶりに僕へ最接近をする

 

アイガー北壁より鋭いベーリング海の荒波と
黄金の種子の弾ける魚沼の秋のあぜ道が
バックヤードでめぐりあったら
宇宙がそこから滑り出す